5月第4週号 エグゼクティブが思考停止に陥ったとき、あるいはその兆候が見られたときにあなたはどう対応しますか。

#119 Performance Coaching

急に思考停止に陥ったことはありませんか?

思考停止の後すぐに思考が再稼働する経験はありませんか?

そのような状態を繰り返さないようどのように対応していますか。


I. どんな時にそのような思考停止が起こるのか

II. 思考停止が起こったらどのようになるのか

III. 思考停止を防止するには



私の場合は思考停止に3つのパターンがあります。



① いろいろな課題を一度に抱えてしまい、順序が判らなくなって飽和状態になってしまったときです。このような状態になると決断に遅延が起こります。


② 何かをしなくてはならないときに急に頭の中が空っぽになり、真っ白な状態になったときです。演奏会の舞台を前にしてピアノを弾く指が上手く動かないのではないか、歌う声がかすれたり上ずったり歌詞がわからなくなるのではないか不安になり、恐怖におちいってしまったときです。プレゼンテーションで人前で上がってしまって何も話せなくなったときなどです。

③ 一番問題となる思考停止は、今までの潜在意識がすべてを支配して、新しいアイデアや直観が出なくなったときです。この動きが速いグローバル経営の時代においては常に新しい情報を取り入れて古い信念を取り外し、新しい現実に向かい合って決断をしなければならないのです。ところがそれができなくなっているのです。思考が停止しているというか、自分の過去の潜在意識が全く反応しなくなっている状態です。今まではアイデア、意見、思い、ひらめき等の様々な思考がぶつかり合って新しいアイデアを取り入れていたのですが、自分の思考の前に大きな壁が立ちはだかるような、ゴールキーパー(Gate keeper)が前進するのを阻んでいるような状態になっているのです。ちょうど川の真ん中に大きな石が転がってきて川の流れを変え、時にはせき止めている状態です。もっとひどい時には脳の血管や心臓の血管が詰まって生死にかかわる病態になりかねない状況と全く同じです。


ではどうしたら良いのでしょう。



あなたの思考が停止しているということは、その状態自体を自分ではわかっていないのですから助けが必要です。

あなたは会社にとって非常に大切なリーダーです。その素晴らしいコア・コンピタンス(能力)があるにもかかわらず、他の人から見るとあなたの思考の一部がすでに停止、休止モードに入っているのがわかるときがあるのです。

あなたは、ご自分の思考が停止しているのがわかりますか。

思考停止がどんなことに影響を及ぼし、結果を狂わせるのでしょうか。
体と思考の筋肉が衰えてきているときです。
そのようなときにProcrastinationが起こります。

あなたは会社のリーダーとしていつも緊張していろいろな課題に対応しています。会社はあなたの直観を信じ、あなたが立案する戦略経営にもとづき、ビジネスモデルを考え、組織を作り、それを実行に移し、いろいろなプロジェクト戦術を実行運営し、長期にわたって売り上げと利益を継続的に出す経営をしてきているのです。

社員は皆あなたの決断を信用し、素晴らしいリーダーとして尊敬して従っています。あなたの思考停止くらいでは何も起こらないと信じていますが、それでも重要な決断に遅延が起き、思考が十分に機能しないと大変です。このような状態はいくらでもがあります。新しい経営の時代が始まっているにも関わらず、思考停止の方は自分の信念をかたくなに保持しようとして新しいことをなかなか取り入れなくなっているのです。このような思考停止が起こらないとも限らないのです。

もしあなたが突然重篤な思考停止になった、あるいは思考停止の兆候が見られると思い始めていることを皆が知ったら、きっとうろたえるでしょう。そしてあなた自身どう振る舞えばよいのでしょう。



ここからがエグゼクティブコーチングです。

それらにどう対応したらよいのでしょうか。

すべきことが明確で、それをどのようにすればよいかを知っているならばそれはファシリテーターの役目です。




これからの会社はどの方向に向かっていくのでしょう。皆さんがすぐに跡を継げるまでに成長しているというならば問題ありませんが、後継者の育成も多くの会社ではやっていません。

思考停止は事故ではすみません。思考停止の兆候がわかるようにしておかないと新しいビジネスモデルを創造しなければならないからです。

だれがオーナーシップを持ってそれをするのでしょうか。もしトップエグゼクティブ自らがそれに気が付いて行動するならば問題は簡単です。話し合う余地があるからです。

トップが病気や事故に遭った時も同様です。問題は自分の限られた信念、または自身の自尊心の強さのために問題を気づかせたくない場合で、それはその人一人の事だけではないからです。

でも誰かが気付くように仕向けなければならないのです。そのような思考停止が致命傷になるのです。

トップが思考停止になる原因を探しましょう。皆が新しい思考法を勉強し、思考の中で衝突Collisionを起こし、会社の将来を手探りで取り戻すのです。

あなたが知らない未来にあなたが答えを持っていなくても、そこに行くシナリオを作っていかなければならないのです。そんなことは難しいとか、できないと言っていては競争相手に負けてしまいます。

疑問に思っている様々な問題を提起し、自分の考えていることが皆と違うということが常識を破ることであり、それらが皆にとって大切な思考法なのです。

今のこの心地良い状態Comfort zoneにいつまでもいられるとは限らないのがこのグローバル社会なのです。

それらの全体像をあなただけではなくすべての人が見ることができ、同じ考え方を持っていればこの情報化時代に遅れることはありません。

一般の人は簡単に思考停止になることがあります。それには多くの原因がありますが、そのほとんどが自分との戦いで他の人にはあまり影響は与えません。しかし会社の場合は全く違います。

未来像のビジュアライゼーションが出来るようなシナリオが書け、ナラティブが作れるかどうかです。

でもリーダーとなると会社において思考停止は致命的です。病気でない限りそのようなことはないと言ってもよいのですが、人生には事故あり、病気あり、自尊心の過度な増長ありでこれらに備えておかないと思考の停止は誰にでもあることです。常に注意しておかねばならないことの一つです。では何があるのでしょうか。

① 変化に対する不安や自分が出来ない恐怖が先行してクローズドになってしまい動けない

  • 過去の成功が今の時代に合わなくなっているのがわかっているが、動けない、人の話を聴くことが出来ない。
  • 自分の昔話を何度もするが未来の夢や希望を語ることができない。

② 自覚症状が明確に出ており何かしないと思考が前に進まない状態。ストレスが溜まっている。自分も周りもうすうすわかっているが、それを明確に顕在意識に上らせることができない。
何らかの状況に陥った時に、自分の習慣や固定観念、外からの意見や他者の話に自分が取り込まれ客観的な思考や行動がとれなくなった状態です。

質問者になったとき、相手の話した内容とは別に自分がどうしても聞きたいことを聞こうと色々考えてメモまで書いたのにすべてが見えなくなり、何を質問してよいのかさえも緊張して真っ白になっています。  

これらの症状を直す方法・処置はありますが、短期の問題の場合は最後にはにっちもさっちもいかなくなって皆が不幸になるのです。

これには次のような特徴があります。

  • 日常の行動・作業パターンが決まっている/決まっていないと落ち着かない人
  • 固定観念の言葉をよく使う人。このようなことは絶対にある/絶対にない
  • 特定の個人をちやほやしたり、特定の集団としか付き合わない
  • 人の言動に左右され、特別な人と思われること。一人だけになること恐れ
  • 経験から判断する傾向が強い
  • 「昔は」という言葉をよく使う
  • 過去に事故や災害などの辛い体験をしたことがある

思考停止を起こしやすい人の例を挙げましたが、あなたの周りに思い当たることはありませんか?

思考停止をした後にすぐ自分を取り戻し、謝罪をしたりフォローができれば大きな問題にはなりませんが、逆切れをしたり、ブレーキとアクセルを間違えるような大事故を起こしてしまったらあなたの人生に大きな影響を与えかねません。

また、いつの間にか自分で考えることをやめ、新興宗教など一人のカリスマに心酔し、洗脳という名のもとに「思考停止」を起こす場合もあります。あなただけの問題であれば、「個人の自由」ですが、これが霊感商法やテロなどに知らないうちに加担してしまうことにもなりかねません。

そして考えることがなくなり、急な変化に思考がついていかなくなります。そのため、急な緊張が起こり、ストレスを感じ、血圧が上がり、かっとなり、挙句の果てには逆切れしてしまうことになるのです。



自分の行動を習慣化=無意識化することをやめませんか?



そして自分の意志を明確に他人に出すようにして、思考の停止に陥らないようにしましょう。

行動する前に目的を意識する癖ができれば新しいことへの意識付けができることがあります。一種の準備運動です。


意識して変化を起こすこと、変化に気が付きその対処法を考えること、その繰り返しがあなたの思考停止を防ぐことができるのです。是非それらを習慣づけましょう。


実践してみて下さい!

そのためには異文化の交流をしたり、大きな夢を考えたり、全く違う分野の人との交わりを多くして色々な未来を語り合うことです。


杉井要一郎 / 2016年5月第4週号 © All rights Reserved by Gledis Inc.

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